黒トラにゃんこ 我が名はニボシ

ライトなラノベコンテストに参加!! ツンデレな黒トラにゃんこのニボシが、時の流れを追いかけて 遭遇するあんなことや、こんなこと。 楽しんでいたけれるといいな。

2013年11月

          下記リンクより、第一話から読んでいただけます。
          http://niboshi.blog.jp/archives/cat_96424.html

我が名はニボシ その⑦ ニボシの神様モード

        ニボシの願望

あの女子。あなどれないかも。確かに「認識出来る者」が感染しない確率はかなり高いと思われる。その上、私が警告文を出したと、本気で考えているようだ。

撒き散らかした警告文だけど、余り効果はなかったかな。もうこのサイトだけでなくあらゆる通信網が侵食されている。認識されていないだけで、私の観測データによれば、実に世界の20%の人がモザイク化している。ネットに煩雑にアクセスするビジネスパースンの感染率が一番高いから、都市部のほうが感染者は多いけれど、どんな地の果にでもネットは存在しているから、安全な場所など今の地球にはない。

問題は感染が人間に特定されるかと言う事だ。

私としては、ユタカさえ無事なら、このまま静観していてもいいかな。

しかし人間以外もモザイク化するとなると、この時間空間で地球を周回している「残る者たち」への感染の可能性もゼロではない。愛すべき我が弟、シャケも守らなければ。

今走らせている検証プログラムの結果待ちだな。

ヒト以外への感染可能性が0.1%以上だったら、行動開始だ。
にぼしpc
 

直接的な戦いをしなければならないかな。

ヒトが言うところの神様モードのチカラを解放すべきか。

ファラオの王のような賢者がいればいいけど、無理だろうな。

神様モードのチカラは性別がキー。私がチカラを行使できるのはヒトのメスに対してだ。

そういえば女王の何とかってのは野心家でおもしろかったけど、蛮族に身をゆだねたのがいけなかったな。あの時の失敗がなければもう少し私たち、なんとかなっていた。

彼女が美人すぎたのか、本当にお馬鹿だったのか、ここらの記憶が曖昧なのは、種として失敗を忘れたいのか。

何にしても過酷な砂漠に住む蛮族が作り上げた神なる存在はホントに破壊力がある。神の為なら、息子まで殺せるなんて自己破壊プログラムが組み込まれてるんじゃないか。かかわりになりたくない存在だ。


 

身近にいるヒトのメスというとあの女子ってことになる。

あまり気が進まない。検証プログラムの結果がゼロならいいのだが。

 

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我が名はニボシ その⑥ 「認識出来る者」

なつみの日記

 8月5日 

荻野君が戻って来ない。

もう1か月だ。

先輩は、先生や荻野君の家族にお話してくれて、せめて捜索願を出そうと交渉もしたけれど、話しても、話しても、具体的な書類作成も捜索もなかった

だんだん、周りにモザイク状態の人が増えていく。なのに、新聞もテレビも何も報道しない。私と先輩以外の人には、この事態を認識する事自体、許されないことのようだ。ネットを開けると『ここへ行ったら、危ないよ』という、不思議な警告文が表示されるようになった。誰が警告しているのかはわからないけど、グーグルにも、ヤフーも開けると、最初の画面に大きく表示される。そして不思議な事に私が撮った荻野君のモザイク写真が載っていて、「感染するとこうなります」と、まで書かれている。先輩がやったのかと思ったけれど、先輩はやっていないと言う。いったい誰が警告しているのだろう。

みんな認識することはできないけれど、この警告文がでるようになってから、少しはネットにアクセスすることをためらうようになったみたい。でも、ネットの情報やメールなしで、生きていけないぐらい幼稚園児だってわかるはずだ。電車も銀行もコンピューターで制御されなければ、運行もできないし、お金を振り込むこともできない。仕事でPCを使用せざるを得ない大人や、携帯なしでは生きていけない私たち。

PCにも携帯にも触った事のない、お隣のおばあちゃん。

多分銀行のATMからかもしれない。おばあちゃんは荻野君のように暴れたり、飛び出していったりしないけど、だんだんモザイク化している。つれあいのおじいちゃんはまったく気にしていない様子だ。でもおばあちゃんは、いつものように、ご飯を作っているそぶりをしてるけど、本当は何もしていないで漂っているだけなので、おじいちゃんはドンドンやせてきている。それでもおじいちゃんは「普段通りですよ」と、笑っている。

どうして、どうして、みんな感じてくれないの。おかしいでしょ。
 

 

9月25日

お隣のおじいちゃんが入院した。栄養失調だ。「ご飯、うちで食べませんか」と、何度も誘ったのに、「ばあさんが、ちゃんと作ってくれている」と、ばかり言っていた。おじいちゃんのバカ。小学生の頃から可愛がってもらっていたから、本当のおじいちゃんと同じぐらい、大切な人なのに。おばあちゃんは1か月前までは、モザイク状だけど、たまに、つらそうな瞳をしていることもあったのに、今は周囲との境目もおぼろげだ。それでも、おうちの前を箒を持って、掃除をしているかのように漂っている。

昨日の新聞の社会面に本当に小さく「モザイク化する隣人たち」という記事が載っていた。こんなにも回りにモザイク状のヒトがあふれているのに、はじめてみる記事だ。私と先輩以外の人で、分かってくれる人がいる。うれしい。先輩に連絡して、この記事を書いた人に会いに行こう。

 

9月27日

昨日、新聞社というところへはじめて行った。庄野さんという女性の記者の人は、用件を言うと嬉しそうに笑ってくれた。庄野サンはこの事態を最初から認識していて、何度も何度も記事にしなければと、主張したのに誰一人庄野さんの言葉を聞いてくれなかったそうだ。いろいろな角度から記事を提出してけれど、馬鹿なことを書くなと言われ、もっと大事な殺人事件やら、強盗事件があるだろうと、笑われていたという。先日の記事は、なんとデスクがモザイク化して、彼女の記事をチェックする人がいなくなり、その隙をぬって掲載したそうだ。でも、社内からは黙殺。普通ならどんな記事でも、少しは来る読者からの電話や手紙での反論、激励すら一通もなかった。私たちから連絡が来なければ、やはり自分がおかしいのだと、病院へ行く予約を取るところだったかもと笑いながら話してくれた。

分かる。

自分がおかしいのかも、と思うのはつらい。

私には先輩がいてくれたけど、庄野さんは一人で戦っていたのだ。

庄野さんの笑い顔は、本当は泣き顔なのだ。

デスクを含め、実はこの新聞社内でも結構な人数がモザイク化していた。彼らは、荻野君のように、毎日モザイク化以前のように、きちんと出社して仕事をしている風だけど、何も食べず、ふわふわと漂い、実はなにもしていない。うちのクラスのように、周囲の社員たちはその事実を認識できない。そして、働いていない人の分の仕事をアップアップしながら、淡々とこなしているのだという。

庄野さんは、「モザイク化する隣人」の記事をシリーズ化して、毎日小さなスペースでもいいから、掲載を続けると言い切った。「黙殺されている事を逆手にとっての攻撃よ」と、言う彼女は、かなりカッコイイ。この記事の掲載により、少数でも私や先輩のように、「認識出来る者」を集められれば、この事態を解消するための何かをはじめられる。

庄野さんのカッコよさに触発されて、私にも出来る事を考えた。

ネットで危ないと言われているサイトのダウンロードをしてみよう。

かなり、危険だけど、予感として「認識出来る者」はモザイク化しないのではないかと、思う。

先輩にそばにいてもらえば、そのサイトの解析もしてもらえるし、モザイク化しないことが実証できれば、これからの戦いに立ち向かう力になるはず。

 

9月30日

先輩にダウンロードはダメと怒られた。 「なつみちゃんは無茶だよ」と、言われた。

予感だけで、そんな事をしてはいけないらしい。実は先輩はここ2ヶ月、あの警告文

の出所や、そのあやしいサイトについてかなり調査していたらしい。

ちゃんと教えてくれればいいのに。

先輩は本当に無口なんだから。

先輩の家のPCは猫の寝床ではなく、ちゃんと機能していたんだ。先輩はPCをいじりながら、いろいろ説明してくれた。

なんとアップされていた私の撮った荻野君の写真は、先輩のPCからアップロードされたらしい。

何らかの遠隔操作なのかもしれないけど、そんなウイルスもどきのものは発見されないんだよ、不思議だなと言う。

例によって、本棚の上からあの猫が私を見下していたので、「あの猫が犯人よ」と、言ってやった。いつもPCの上で寝ているのは、そのためにちがいないと、続けたら、大きな眼で猫が私をにらんだの。

先輩は大笑いして、「ニボシはそんな子じゃないよ」と本棚からやさしく猫を抱き上げて、のどを撫でた。

冗談のつもりだったけど、もしかしたら、本当にあの猫の仕業かもしれない。

人間がモザイク化するのだから、猫がPCを使いこなしても不思議じゃない世界だよね。

みおろ酢ニボシ

 

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我が名はニボシ その⑤ 黙殺される不具合

        なつみの独白

ホント先輩が一緒でよかった。

先輩、昼休みにますます、モザイクっぽくなっている荻野君をうちのクラスに見に来てくれた。もうどうしようもなく変なことになっている荻野君なのに、みんな普通っぽく無視している。もしかして、私がおかしいのかもしれないと言った言葉を、先輩は確認しに来てくれた。

本当に素敵。

「大丈夫だよ。なつみちゃんの目がおかしいわけじゃない。なぜ、みんな何も言わないのかな。彼を助けなきゃいけない」と、言ってくれた。

私がおかしくなったのではないのだ。先輩の言葉に、長い間、悩んでいた緊張が解けて体の力が抜けちゃいましたよ。ああ、先輩、やっぱり頼りになります。

でも、その時荻野君の様子が本格的におかしくなった。

もともとクラスからの独立宣言をするような、変わった男子で、あまりしゃべらないけれど、自信は持っているぞというオーラを感じさせる存在だった荻野君。

その彼が突然、立ち上がると、暴れ始めた。

「ぼくはぼくでいたいのにぃいい」

でも輪郭がガクガクしている荻野君が暴れても、物理的インパクトはあまりなかった。

みんな知らん顔。私たちだけが彼をとめようと頑張ったけど、荻野君、窓から外へ飛んでいってしまった。

でもここ4階なのに。

みんな、どうして完全無視なのだろう。

分からない。こんなのおかしい。

でも、大丈夫。先輩がこの事実を共有してくれたもん。

私がおかしいわけじゃないことを知ってくれる人が、たった一人でもいてくれる。

 

にぼし5
 

        ニボシの困惑

解析に丸一日かかってしまった。

荻野なる者と同様の現象は散発的ではあるが、地球各地で起こっている。そして、それは周囲に黙殺されている。異なる時間空間からの構成体を認めることは、精神的にヒトとしての存続を危うくするからなのか。

では、この女子とユタカはなぜこの事態を認識できるのか。

・・・・・・

時間軸の揺らぎは、この間の一瞬のみでその後は観測されていない。

あの一度の揺らぎで、侵入は完了してしまったようだ。現象としては、ネット上のどこかのサーバーにその構成体が常駐している。とはいっても、その構成体はすでにありとあらゆるデジタル通信網を侵食しているようだ。該当サーバーを攻撃しても、この事態を終焉に導くことは不可能だろう。多分、具体的な経路は、携帯かPCでのダウンロードによって機器に伝播し、持ち主に直接感染すると思われる。

どうしたものかな。

ネットに侵入して警告を撒き散らすぐらいか。

しかし、警告しても、ヒトはその事実を認めることはできないようだ。

こういうのを八方ふさがりというのだな。

構成体に侵食された人間は、だんだん自分が自分でなくなる恐怖を味わいながら、「生なき者」へとモザイク化していく。周囲のものは、その事実を認めない。認めることが出来ない。そして、どんどん「生なき者」が増殖していく。

 

 

当面は静観するしかないのか。

所詮ヒトの話だ。私たちを庇護もするが、迫害もするヒトの問題だ。

四旬節であぶり殺され、穀物の精だと言って刈入れのたびに打ち殺されたりした「自覚者」でない同胞たちの記憶が甦る。

ああぁ、PCの上に一日丸まっていたから、身体が熱くなった。

エアコンのある居間のソファで。シャケに身体を舐めてもらおう。

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我が名はニボシ その④ 生なき者へのモザイク化

ニボシの分析

にぼし分析

 

これは、大変な状況。

この画像から判断すると、この女子のクラスの荻野君なる存在は、この時空間に存在するはずのない構成体に侵食されている。それがどの様な時間空間からのものなのかは特定できない。でも、生きているヒトがこの構成体に侵食されると、それは生きてはいない状態に変容するようだ。画像からみると「生なき者へのモザイク化」というところかな。

これなら、実体をしっかり持ったゾンビの方が、まだヒトには許せるだろうな。存在するのに、生きてもおらず実体がないなんて、不可思議すぎてヒトには理解できないだろう。

この女子の話によれば、荻野君なる人物は変容する自分を自覚しているようだ。

完全に侵食されてしまうまでの、だんだん自分がなくなっていく感覚を味わっていくことに、ヒトは耐えていけるだろうか。

ひげがちりちりなんて、普通しない。この間の揺らぎはこの予兆だったのか。

でもこの現象をヒトに説明する手段がない。彼らにはまだ、この空間と時間空間の交差についての知識が獲得されていない。

もちろんこの現象を解決する手段も持っていない。

未来の空間から、なんらかの揺らぎを経て、この時代に侵入してくる構成体がある。

私たちも時間旅行は実現していない。実現できていたなら、地球侵略などせず、母星を救っていた。しかし時間について、ある程度の理論は解明されている。

 

今回の現象は作為的に行われたことなのか。あるいは何らかの自然事象の変化による事故のようなものなんだろうか。

広範な変化なら多分ほかの地域でも同じような状態の事例が発生しているはず。

脆弱なシステムだけど、ユタカのネットから事例の抽出を行わなければなるまい。

もし未来からの干渉となると、この時間空間で生存している同胞のために、具体的な対策をうたねばならないかも。

やっかいなことに、私たち種族は住んでいる場所に愛着を持ってしまう性癖があるのだ。

それにユタカは守ってあげないと…



                                    つづく
 

 

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我が名はニボシ その③ なつみの相談

なつみの相談

先輩、ちょっと、聞いてくれませんか。同じクラスの荻野君の事なの。

いつも変わった事ばかりする子だけど、わが道を行くタイプで、みんな「荻野なら仕方ない」というカンジでだった。PCとかスマホが大好きで、相当な技を持っていたみたい。彼に頼めば、たいていのアプリはタダで手にはいるという噂。

月曜日の昼休み、教室の窓際に座っている荻野君が、ゆがんで見えたんだ。

私のメガネがおかしいのかなって、一生懸命拭いちゃいました。外側というのか、しいて言えば、テレビでモザイクがかかってるようなカンジ。3回目にメガネを拭き終わってから、そばに行って、話しかけたの。その時は、ちゃんと会話はできたの。

「なんだか、君ゆがんでガクガクして見えるよ」と言ったら、「やっぱり」と、答えるの。

なんでも昨夜から、どんどん自分が希薄になっていく感覚がして、でも、朝ご飯も食べて、いつものように登校できたのだけど、なんだか自分の存在が消えていく気がする感じがすると言うの。お昼食べたのと、聞くと「ああっ」と答えたけれど、机の上には手付かずのパンと牛乳がそのままでした。

みんな、何か変だと思わなかったのかな。どうしたらいいのかわからないから、その日はそのまま午後の授業を受けました。荻野君はいつものように、自分の陣地と決めている自分の机の周りと教室の本棚だけを掃除して帰っていきました。そう、彼は一年二組から、独立宣言をしていて、ここは自分の陣地と宣言をするような、もともと変わった人だったの。だから、今度もきっと何かおかしなことを思いついたのかなぁと思うことにした。じゃないと、どうしていいか分からないぐらい、荻野君の輪郭、ガクガクだった。

次の日、荻野君もっとモザイクみたいになっていて、でもちゃんと机には座っているのです。

そこにいるのに、存在がないようなカンジ。荻野君と周りの境目がはっきりしていないカンジ。

うまく説明できないけど、とにかくおかしい。

「昨日よりゆがんでるみたい」と、話しかけても、答えようとしているのは分かるけれど、漏れるような音が聞こえるだけでした。

クラスのみんな、こっちを見ているくせに、何事もないような顔をしていました。

ええっ、私がおかしいの?

彼がこんな風に見えるのは私だけ?

もしかしたら、そうかも。ここはひとつ空気を読んで、すべて無視無視。

とりあえず荻野君の姿を携帯で撮って、先輩に相談に来たわけです。

変でしょう。普通に撮ったのに、モザイクがかかっているみたいですよね。こんな風に見えるの。私、技術なくて、画像処理とかできないの。本当にこんな風になんですよ。

私どうしたらいいのか、わからない。 

先輩、PCの横で寝ているニボシの喉を、撫でている場合じゃないです。

                                       つづく

 にぼしpc

 

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我が名はニボシ その② ニボシの予感

なつみの疑問

今日も先輩の家にむりやり訪問。

数学の勉強を教えてもらうという口実は、かなり有効なお近づきの手段。どんどん問題が難しくなるのはキツイけど。数学好きのメガネっ子というのは、理系の男の子にかなりポイント高いはずなのに、先輩は、ひたすら紙に数式を書くばかりで、ちっとも私の顔をみてくれない。でも、先輩の教え方はとても分かりやすいから、本当に数学が好きになっちゃうかも。

すらすらと数式を書く先輩の長い指が素敵だなぁと見とれていると、うーん、いつもの視線を感じる。本棚の上から、猫のニボシが私を見ている。それとも、先輩が動かすシャーペンの先っぽに、じゃれたいのかな。でも、先輩の指が止まって、考えはじめると、ひげをピクピクさせながら、どうみても数式を見ているの。そして、私に、「あんた、なんでこんな事もわかんないの」という顔をするの。ニボシのいる場所が悪いよね。本棚の上から、私を見下している。でも、先輩が愛するペット様だから、私としては耐えるしかない。私が猫なら、大ゲンカして追い出してやるんだけどなぁ。ニボシの目つきてば、本当にサイアク。

あれ、今度はじーっと上を見つめている。猫って時々何もいないところを、じーっと見ていることがあるよね。霊とかいるのかなぁ。霊感の強い人だとわかるのかなぁ。なんにしてもちょっと不気味。

とりあえず無視して、この二項定理に集中しないと、先輩においていかれちゃうね。

 

ニボシのひげ
 

        ニボシの予感

またまた、あの女子が来た。ユタカに数学を教わりに来る。引っ掻く訳にもいかないから、バカにした目で見る事にしている。向こうもこちらの悪意に気がついているようだ。早く帰ればいいのに。おお、今日は二項定理。なかなかおもしろい。数式を通してなら、ユタカと意識の共有ができそうな気がする。

あれ、ひげがチリチリする。

なんだか空間がおかしい。

時間軸が揺らいでいる?

地球では同一時間軸が揺らぐことはないはず。過去の観測データにもアクセス。

このタイプの揺らぎは観測されていないことを確認完了。

揺らぎが亀裂を生じさせようとしているようだ。計測を開始しなければ。

見つめて、見つめて。ひげに集中。

                              つづく



 

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我が名はニボシ その① 悩ましい記憶


なつみの独白  
 

先輩の家の猫はおかしいの。見た目は普通の黒トラで、真っ黒の丸い目は可愛いし、鍵みたいに曲がった尻尾をブンブン立てて、先輩にスリスリするところは確かに猫。
 「ニボシ」と先輩が呼ぶと、のどをゴロゴロさせて、あられもない格好で好き好き光線を出すところも たしかに猫。

でも、違う。

私を見下すような、あの眼は絶対猫じゃないもん。

にぼし

  

ニボシの記憶
 

「ニボシ」と、ユタカに呼ばれると、数千年の歴史が身体を支配してしまい、ついゴロゴロしてしまう。どうしてユタカには弱いのだろう。

私の名は「ニボシ」。

一年前、捨てられていた公園で、ユタカに拾われた。一番器量よしの上の子は、よその家にもらわれていったらしい。私と弟がユタカの家で育てられた。弟はごくごく普通の猫だ。いい子だ。毛繕いもしてくれるし、走り回って、一緒に猫ジャラシを追っかけまわすには楽しい相棒だ。


でも、私にはなぜか生まれた瞬間から、しっかりと意識があった。そして、私たち種族の過去の歴史やその使命を知っていた。

何度も弟とこの事実を共有しようとしたけれど、弟には食べ物と動くものへの興味しか存在していないらしい。

ちなみに弟の名は「シャケ」という。このネーミングはユタカのせいでなく、ユタカの母親のセンスだ。まあ仕方ない。

なぜ、私にだけ私たちの種族の記憶があるのかは、わからない。
家の周りの猫たちとも接触を試みたけれど、私ほど鮮明に記憶を持つ者はいなかった。

伝説として、不確かながら意識を持った猫、「自覚者」と呼ばれる者がいたらしけれど、本来の使命はすっかり忘れ去られている。同胞とはコミュニケーションは取れるけれど、彼らに使命を果たすチカラも記憶もない。

その上、この私でさえ、ユタカに優しくされると使命のことなど頭からふっとんで、ただただユタカに撫でてもらうことしか考えられなくなる。

 

私たちは数千年前、この天体=地球の侵略を目的として、やってきた。

当時私たちの母なる星は、巨大隕石の衝突と言う不測の事態から環境の激変にみまわれ、移住の検討を余儀なくされていた。技術的には宇宙への手段を持っていたが、それまでは、住み心地のよいその星を離れる事など考えてもいなかった。しかし、温暖だった気候はどんどん寒くなっていき、寒さが苦手の私たちはついに他の惑星への移住を決断した。移住のための探査だけでも多くの同胞の命が失われた。

酸素があり気候が温暖で文明を持つ生物がいないという惑星のひとつに、地球があった。

私たちがのんびり暮らすにはもってこいの観測結果だった。

どうしても母星をはなれたくないという、母星の環境改善計画推進派や、もう隕石の衝突などのリスクをうけたくないから、惑星移住でなくスペースコロニーを選択したいという一派もあり、調整に手間取り、千名を乗せた先遣隊の地球への到着は、観測からかなりの時が経っていた。

私にはその時の、衝撃的な記憶もある。

地球に着陸するための周回中、地上に文明の存在が確認されたのだ。軌道上からも確認できるほどの、原始的ではあるが巨大な建造物が見えた。それは明らかに星の運行を定義した上で配置されていると分析できた。

また、長い協議が始まった。殲滅するか、侵略してこの種を残すか、あるいは母星に帰還するか。結論はなかなか出ず、ひとまずこの星の状況を調査する事となった。先遣隊が調査を行う間、資材の消耗を防ぐため、「残る者たち」はコールドスリープで待つ事となった。

だから、今でも同胞たちは、眠ったまま、地球を周回しながら、私たちの調査結果を待っているのだ。

そして、数千年が経ってしまった。

なぜこんな事になってしまったのか。

星に降り立った時、私たちをヒトは神として崇めた。私たちにはヒトが持たぬチカラがあり、彼らと意思を通じあうこともできた。彼らに星の運行を教え、気候の変動を予知する技術を授けた。私たちはこの文明をもう少し発展させてから、同胞に連絡するつもりだった。

ヒトは私たちを讃え、私たちに触れる事を至上の喜びとした。

ヒトの手は心地よく、ヒトに触られることは私たちにも悦びをもたらした。

しかし、ヒトたちは私たちの予想外のプロセスで発達していった。

私たちが降り立った地域のヒトは私たちのチカラを侵略に使いはじめ、やがて、他の地域の蛮族と戦いをはじめた。蛮族たちにとって、私たちは神ではなく、単に殲滅すべき他民族の象徴だった。蛮族は私たちを忌み嫌い、そのためか蛮族とはコミュニケーションをとることができず、直接的な暴力を持たぬ私たちは、虐殺されていった。蛮族たちは私たちの体に火をつけて、ヒトの城壁になげこみ、ヒトがその罪深さにおののき、慌てふためく間に、すべてを破壊し、私たちが、育てようとしていた私たちのための文明が、崩れ去った。すでに地表におりたってから、三千年余りたっており、神として君臨し、ヒトに仕えられて、傲慢になりすぎいていたのかもしれない。

その時点で「残る者たち」に連絡を取ることが検討されたが、この戦乱の中、決断を下せる間もなく、私たちは分散していった。

 

その後の迫害の歴史やらなにやら、あまりにはっきりしすぎていて、結構痛い。

私には記憶があり、到着時の私たちが持っていたチカラもある。

でも使命に関して、どうしたらいいのだろう。結論を持ち越しすぎて今に至ったのだ。私が何らかの結論を出していいのだろうか。発展をとげた蛮族の子孫たちはもうすぐ、周回中の「残る者たち」を見つけてしまうだろう。そして、私ときたら、ユタカに撫でられると、ついついゴロゴロして眠ってしまう毎日を送っている。

もしかしたら、地球人は私たちが侵略者だと知っていて、この撫でるという行為によって、私たちから知性を奪い取ってしまったのかも。


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