ニボシの絶望
まったく、この女子、どうしたものか。
いちいち怒鳴らないと、思うようにならない。
私の持つ記憶に基づいて、ヒトが言うところの神様モードのチカラを発揮しているのに。
この子の遺伝子には蛮族のDNAしかないのか。
それとも私の記憶に何か、欠落した部分があるのか。私の爪をいれて、直接脳にアクセスすれば、完璧に私が支配できるはずなのだが。
素直に聞けば、プトレマイオス朝の女王みたいに人々の崇拝を得て、世界を支配することだってできるのに、へなちょこ女子は絶望的に使えない。
まあ、怒鳴ってしばらくは、言う事を聞くから、当面この態勢でいくしかない。それにユタカには、この子を通じて私の存在が神に近いものであると伝えることが出来たから、ユタカの力を使って、何とかやってみよう。
検証プログラムによれば、猫への感染の確率はゼロに近かった。しかし、ニューヨークとオレゴン、ダラスでモザイク化した猫の症例が三点確認された。いづれも「自覚者」ではないようだけど、私には同胞や「残る者たち」を守る義務がある。
私のひげがチリチリしたあの時の揺らぎの発信源を特定し、そこから侵入してきた構成体を分析しよう。だか、すでに感染したヒトをもとに戻すことは不可能だろう。揺らぎを生じさせた発信源を突き止めて、そこから解決策を得るしかない。
数学好きのユタカに、私の記憶のなかの、私にも良く分からない呪文を与える事によって飛躍的にその能力を向上させた。発信源の特定にそう時間はかからないだろう。
新聞記者の庄野さんというオンナはなかなか使える。この部屋も彼女の仕事上のつながりから情報を得て準備できた。政府系の情報機関の所有物なのだが、神様モードのチカラを発揮すれば、たやすく使用が可能になった。彼女も既に私の崇拝者だ。
でも、早くこの件を解決して、神様モードの力を発揮することは終わりにしたい。崇拝されるのは、めんどうくさい。
神様稼業をやるよりは、シャケと遊んだり、ユタカに咽喉を撫でられている方がいい。
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